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主催公演「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」作品解説2 [過去のイベント]

2021年8月31日(火)
神奈川県立音楽堂にて開催いたしました
POC主催公演
「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」
につきまして、当日演奏された作品の解説を会場プログラムより転載いたします。


三つのバリトン歌曲
〜「三田評論」巻頭連載詩より〜

 馬場は慶應義塾の機関誌である「三田評論」に1984年1月号から6回に亘って巻頭詩を連載しているが、その題名はすべて楽器名から採られており、1月から順に「マンドリン」「パーカッション」「法螺貝」「ヴィオラ」「トランペット」「コントラバス」であった。2014年に初演した「マンドリン」に続き、今回は「パーカッション」「トランペット」をバリトン歌曲として音楽化する事ができた。作曲者としてはこの3曲はあくまで独立したバリトン歌曲と考えており、今回の演奏順も(原作詩の発表順にはよらず)曲調を考慮して「トランペット」(五月)「パーカッション」(二月)「マンドリン」(一月)とした。残された「法螺貝」「ヴィオラ」「コントラバス」についても音楽化の可能性は大いに感じられるが、これを音楽化する事は才能ある後進に譲りたい。
 参考までに三田評論の巻頭詩については、この前後だけを見ても堀口大学、草野心平、村野四郎、吉増剛造と言った錚々たる面々が担当しており、当時の馬場が彼等と並ぶ詩人として高く評価されていた事がうかがえる。以下に各曲の解説を記す。

トランペット
~丘の上に拠るパラフレーズ~(1984年5月号初出)
(バリトン/トランペット)

 「トランペット」は1984年5月号の巻頭詩として発表された。 慶應義塾の関係者にとって五月は慶早野球試合(早慶戦)の季節でもあり、その試合に勝利した場合にのみ歌われるという伝統のあるカレッジソング「丘の上」(1928年、作曲:菅原明朗、作詞:青柳瑞穂)を思い出す季節でもある。この詩の中にも「喨喨とトランペットはひびく」という「丘の上」の歌詞を強く意識したと思われる部分があり、その様な理由もあり曲中では「丘の上」の旋律を引用、展開*している。
 一方で馬場が国語科教諭として勤務する傍ら部長を務めていた当時の慶應高校マンドリンクラブでは、ヴェルディの歌劇「アイーダ」二幕二場、「凱旋」の場面をトランペット入りの編曲で演奏する機会が度々あり、作中の「エジプトラッパ」はかの曲を想起させる。

*この引用、展開については「丘の上」の著作権承継者の許可を頂戴している。

パーカッション(1984年2月号初出)
(バリトン/パーカッション)

 「パーカッション」は1984年2月号の巻頭詩として発表された。本曲は原作詩に登場する打楽器のみを伴奏に使用したバリトン歌曲として作曲したが、登場する楽器は順にティンパニ4台(内2台はペダル付)、ビブラフォン、カスタネット、シンバル、トライアングルである。打楽器奏者はティンパニとビブラフォンを演奏し、カスタネット、シンバル、トライアングルはバリトン歌手自身が演奏する事を想定している。
 詩にある「木の小屋」は1970年代の慶應高校で、マンドリンクラブも部室として使用していた部室棟が木造だった事に由来しているかも知れない。また付属校を含めた慶應義塾のマンドリンクラブではパソ・ドブレ(スペインの闘牛風の音楽)である「エスパーニャ・カーニ」をコンサートの最後に演奏するという伝統があるが、馬場は当時クラブの練習で、カスタネットが登場するこの曲を頻繁に聞いていたものと思われる。


マンドリン(1984年1月号初出)
(バリトン/マンドリン/ギター)

 「三田評論」での巻頭詩連載開始にあたり、詩人が最初に選んだ楽器はマンドリンであった。幼少時から音楽に親しみ、オーケストラの定期会員として日常的にクラシックに接していた馬場であったが、勤務していた慶應高校では1974年からマンドリンクラブの部長を務めており、この事と第一作にマンドリンを選んだ事とは無関係ではない様に思える。伴奏楽器にマンドリンとギターを使用した本曲は2014年の「みなこへのうた」初演に合わせ柳澤が作曲・初演したもので、今回が再演となる。
 詩はマンドリンと海の描写を中心に進むが、初演後に詩人の遺族から受けた感想の一つに「城ヶ島でのマンドリンクラブの合宿での印象が基にあるのではないか」というものがあった事を付記しておく。当時の合宿では消灯時間が過ぎた後の練習も黙認されていたと記憶しているが、詩人は消灯後の床で、遠い潮騒と共にかすかなマンドリンの音も耳にしていたのかも知れない。

(当日の会場プログラムには原作詩本文が掲載されました)
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主催公演「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」作品解説 [過去のイベント]

2021年8月31日(火)
神奈川県立音楽堂にて開催されました
POC主催公演
「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」
につきまして、当日演奏された作品の解説を会場プログラムより転載いたします。

風車 そのほか
〜馬場邦夫の詩による混声合唱の為の三章〜
(ピアノ伴奏付き混声合唱曲)
「たからものてんじ会」(1970/オルフェの会)より

 「たからものてんじ会」は詩誌「Orphée」の同人5名の共著により1970年に出版された。表題作である寺村千草による童話「たからものてんじ会」に続き、馬場邦夫「風車 そのほか」、田中正之「確かな記録のための詩二篇」、寺本緑郎「桂子」、山田直「詩にならなかった詩 三篇」の4名による詩作品が収録されている。「Orphée」第67号(1972年3月)の編集後記には「たからものてんじ会」が米合衆国議会図書館からの注文を受け寄贈されたとの記載がある。
 「風車 そのほか」は14行詩四編からなる連作詩であるが、順に<I>~<IV>と冠された各編の第一行のみが太字のゴシック体で印刷されており、詩の第一行であると共に各編の表題としての役割が与えられているかの様な印象を受ける。柳澤がこの作品の存在を知ったのは2014年で、当時「みなこへのうた」初演に際し行っていた「Orphée」文献調査中の事であった。朗読付き室内楽として音楽化した「みなこへのうた」、バリトン歌曲とした「三田評論」の巻頭詩に続く合唱曲になるのではと考え音楽化を企図したが、諸事情により四編のうち「<III>まつりの夜です」を省略した3曲からなる混声合唱組曲として作曲した。作曲に際し念頭に置いたのは「歌いやすく、親しみやすいオーソドックスな合唱曲」というイメージで、各声部の音域や難易度設定については極力無理のない様に配慮したつもりである。以下に各曲の詳細を記す。

演奏時間:約9分
編成:混声四部合唱(SATB)、ピアノ伴奏
作曲時期:2020年4月~9月

<I>きみはおぼえてるかな
 風車を模したピアノ前奏で始まる叙情的な曲。軽快なテンポで始まる合唱は一旦落ち着いた後に前奏と結合されるが、表情に合わせて加速、減速される。

<II>きみがすきなものは
 ピアノ練習曲風の伴奏を素材に、家庭の温かな風景を描写しようと試みた。各声部の諧謔的なソロを経た後、一転して叙情的な回想で終わる。

<IV>日輪の天よりふりそそぐごとく
 前半は急速な同音連打を伴った舞踊風(5/4拍子)の動機による男性的な合唱で始まるが、これは作曲の師匠にあたる石井歡(1921-2009)、そしてその師匠であるカール・オルフ(1895-1982)の影響を受けたものである。様々な花火をめまぐるしく描写した後、鈍重なテンポで冒頭の動機が再現され、特徴的な「が」一文字による行も転調に利用しながら荘厳な終局へと導く。

(当日の会場プログラムには原作詩本文が掲載されました)

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【速報】主催公演「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」演奏曲決定のお知らせ [過去のイベント]

新年明けましておめでとうございます。
皆様にとって2021年が幸多き年となります事を心より祈念申し上げます。

先日お知らせしたPOC主催公演
「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」
2021年8月31日(火)
神奈川県立音楽堂
につきまして、演奏曲が決定いたしましたのでお知らせいたします。

風車 そのほか *
〜馬場邦夫の詩による混声合唱の為の三章〜
(ピアノ伴奏付き混声合唱曲)
「たからものてんじ会」(1970/オルフェの会)より

「トランペット」 *
〜「丘の上」に拠るパラフレーズ〜 **
(トランペット伴奏付きバリトン独唱曲)
初出「三田評論」(1984年5月号巻頭詩)

「パーカッション」 *
(パーカッション伴奏付きバリトン独唱曲)
初出「三田評論」(1984年2月号巻頭詩)

「マンドリン」
(マンドリン・ギター伴奏付きバリトン独唱曲)
初出「三田評論」(1984年1月号巻頭詩)

みなこへのうた
(朗読付き室内楽曲)
「みなこへのうた」(私家版詩集)より

* 新作品初演
** 副題の「〜「丘の上」に拠るパラフレーズ〜」は今回の音楽化に伴い作曲者が加えたもので、原作詩にはありません。「丘の上」(1928) は菅原明朗作曲/青柳瑞穂作詞による慶應義塾のカレッジソングであり、本曲内での引用にあたっては権利承継者様からの許諾を受けております。

本公演の詳細については今後も決定次第本ページにて発表いたします。
POC公式 Twitter も合わせてご利用ください。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

事情により演奏曲の一部が予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。

本公演は新型コロナ肺炎ウィルスの流行状況等により日本国政府および関係自治体、使用会場等のガイドラインに沿って開催されます。また情勢によっては中止となる場合もありますことをご了承ください。
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【速報】主催公演「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」開催のお知らせ [過去のイベント]

コロナ禍の中、皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしでしょうか。

このたびPOC主催公演として
「音樂會〜馬場邦夫の詩による作品集〜」
2021年8月31日(火)
神奈川県立音楽堂
で開催*することとなりました。

柳澤明良(POC主宰)がライフワークとしている詩人馬場邦夫(1934-1986)の詩作品音楽化プロジェクトでは2014年8月に
・マンドリン(三田評論1984年1月初出)(バリトン/マンドリン/ギター)
・みなこへのうた(私家版詩集)(朗読付き室内楽)
の2曲を初演しましたが、今回はそれらに新作を加えた全曲オリジナルプログラムとなる予定です。

公演の詳細については本ページにて漸次発表いたします。
POC公式 Twitter も合わせてご利用ください。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

*本公演は新型コロナ肺炎ウィルスの流行状況等により日本国政府および関係自治体、使用会場等のガイドラインに沿って開催されます。また情勢によっては中止となる場合もありますことをご了承ください。
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「詩人馬場邦夫を偲んで」ご来場御礼 [過去のイベント]

去る8月24日求道会館にて行われました POC 主催公演
「詩人馬場邦夫を偲んで」
には多数のご来場を頂き、まことにありがとうございました。
多くのお客様からご好評を頂きました事は主催者としてこの上ない喜びでございます。
最後になりましたが、今回の公演にご後援ならびにご協力を頂きました関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

イベント終了により、過去記事の一部を修正いたしました。 また期間限定公開としていた一部の記事については公開を終了いたしました。
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